PROJECT

03

South Africa

Platinum
Group Metals
Project

PROJECT
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南アフリカ共和国
白金族金属プロジェクト

貴金属を、日本へ。
世界の産業を
輝かせるために。

BACK GROUND

白金族金属とは、プラチナ(白金)を始めとした6元素の総称だ。中でもプラチナとパラジウムは、日本の産業界にとってはきわめて重要。自動車の排ガス浄化触媒や燃料電池に使用されるほか、電気・電子分野、医療分野、そしてもちろん、宝飾業界での需要も高い。一方で、南アフリカとロシアに偏在していることから、安定した供給経路の確立には課題も大きい。この状況を打破するために動き出した、国家レベルのプロジェクトがある。

DAISUKE HIROKAWA

TAISUKE
HIROKAWA

廣川 大助
プライマリーメタル第一部
2001年入社/経営学部 卒

STORY

01

「プラチナ」の
クリスマスプレゼント。

その話が廣川たちのもとへ持ち込まれたのは、2017年のクリスマスだった。「南アフリカで進行中の、白金族金属のプロジェクトに参画する気はないか」。話の出どころはJOGMEC。日本の独立行政法人だ。

JOGMECは2011年、海外企業との共同探査で、南アフリカのウォーターバーグに白金族金属の鉱床を発見。その開発準備をいよいよ本格化するにあたり、日本への供給を任せられそうな複数の商社に入札への参加を呼びかけていた。

廣川たちは色めきだった。ことがうまく運べば、白金族金属はもちろん、同時に産出されるニッケルなども安定的に購入できるようになる。ニッケルはEVなど環境対応車の電池に使用されるため、やはり自動車産業にとって不可欠。将来性も大きい。阪和興業のポートフォリオに貴金属という強力なジャンルが加わる上、日本の産業界にとって悲願だった安定供給の道ができる。さらに、現地パートナーのインパラ・プラチナム社は、旧知の取引先という縁もあった。

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STORY

02

正月の日本から、
真夏の南アフリカへ。

プロジェクトへの参画には、もちろん多額の出資を伴う。どんなに魅力的な話でも、リスクを冷静に洗い出した上で可否を判断しなければならない。入札が行われるのは2月。時間はない。

廣川と上司、部下たちは、正月返上で1,000ページを超える英文の鉱山資料を読み込んだ。地下1,500メートルにも達するボーリングの記録。現地住民との交渉記録。電力や水資源の状況。そして、不用な鉱物を堆積させるテーリングダムの整備計画。白金族金属は、1tの鉱物を掘り出して3グラム見つかるかどうか。大量に発生する不用物の処理は厳格に行う必要がある。

その目で直に確かめるため、現地にも足を運んだ。まずは年明け早々、上司が単独で1泊4日の強行軍。さらに1月中旬には、廣川もウォーターバーグへ。入札に参加する他社との合同視察団だ。つまりはライバル同士の呉越同舟だが、意外と緊張感はない。「日本裨益(ひえき)」という言葉がある。しのぎを削りあう間柄でも、海外に出れば同じ日本の商社同士。「日本に利益をもたらす」という大きな目的を共通項に、不思議と団結してしまう。

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03

日経新聞に載る仕事を。

白金族金属は、世界産出量の約80%が南アフリカに集中している。20億年以上も昔、地球の内部からマントルがせり上がったポイントだからだ。

それほどまでに雄大な自然の産物も、流通は政治と人間に大きく影響を受ける。廣川が懸念したのは、南アフリカにおける労働組合の活発さだった。過去にも大規模なストライキが発生し、日本の企業が操業停止などのダメージを受けている。だが、その状況が好転する見込みがあった。汚職疑惑があり、社会的混乱の一因とされていた当時の大統領が、近いうちに辞任することが確実視されていたのだ。リスクはゼロにはならない。だが、これまでよりは低くなる。こうした好材料が出始める中、廣川の部下たちは新規取引先の開拓にも成功していた。準備は万端。

廣川たちのプレゼンテーションを受け、経営陣から入札参加のゴーサインが出た。そして2018年3月、阪和興業による落札が決定。やがてJOGMECから、契約者としての地位の一部が阪和興業に譲渡された。一連のニュースは、廣川がひそかに目標にしていた「日経新聞に載る規模の仕事がしたい」という夢も叶えてくれた。

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04

社内も社外も、
ひとつになって。

2019年の秋。2年にわたって行われた鉱山のフィージビリティ・スタディ(実行可能性調査)の結果が発表された。鉱物埋蔵量、含まれる白金族金属量、設備投資や操業コストなど、多くの項目で好スコアをマーク。廣川たちは胸を撫で下ろした。

プロジェクトのこれまでを振り返ると、「縁」のありがたみを痛感すると廣川は言う。「JOGMEC、インパラ・プラチナム社、大手自動車メーカー。ほかにも多くの取引先から、情報提供と支援を受けることができました。過去と現在の縁が活き、さらに将来につながっていった感覚があります」。貴金属というジャンルに本格的に踏み出すにあたり、廣川は「取引先の役に立つ事業であること」に徹底してこだわりつづけてきた。その意識が取引先にも伝わり、大きな期待感につながっていったのかもしれない。

さらに勝因を挙げるなら、「チームの一体感」がある。入札までわずか2ヶ月でリスクの精査を完了するには、チームの全員が意志をひとつにしながらも、それぞれのミッションを同時進行させなければ不可能だった。「それが、難なくできました。上司も部下もなく、新規事業にかける想いがピタリと揃っていた。リスクも決して少なくないプロジェクトですが、一体となって挑むことで阪和興業の事業ポートフォリオを発展させ、白金族金属の安定供給に向けた下地をつくることができた。それがうれしいですね」。

だが、まだ「下地」。いま以上の発展への期待を集めながら、プロジェクトは続いていく。

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