PROJECT

07

Netherlands

Oversea Subsidiary
Organizational
Reform Project

PROJECT
PROJECT

オランダ
現地法人の組織改革プロジェクト

アムステルダムに
「阪和愛」を。
ひとつになれる力を。

BACK GROUND

世界中に50以上の海外事業所を持つ阪和興業。その形態も規模もさまざまだが、成長や拡大に欠かせないのは現地で採用するスタッフの力だ。文化も、労働法も、ビジネスの慣習も異なる彼らが、いきいきと働ける組織を実現するのは難しい。少数精鋭ゆえに、組織づくりに手が回りにくいという背景もある。この高い壁を超えて、強いモチベーションで結ばれた組織をつくれるか。

KUMIKO BELUJOHN

KUMIKO
BELUJOHN

ベルジョン久美子
Hanwa Europe B.V.(出向)
2006年入社/文学部 卒

海外ネットワーク

STORY

01

「ここにいても未来はない」。

ベルジョンがアムステルダムの現地法人に出向したのは、2016年のこと。

当時は、食品・鉄鋼・非鉄金属の3部門を合わせてわずか4名という小さな所帯だった。ベルジョンはたった1人の鉄鋼担当。ほかの部門との交流は、まったくといっていいほどなかった。部門が違えば文化も違うし、お互いのミッションも知らない。出張が多いため、顔を合わせる機会もない。それでも始めのうちは、何の問題もなかった。

ひずみが感じられるようになったのは、現地採用のナショナルスタッフが増え始めてからだ。採用活動もマネジメントも部門ごとに行っていたのだが、そのことが引き金になった。たとえば、ある部門のスタッフは責任ある仕事を託され、厳しい指導を受ける。別の部門のスタッフはルーチンだけを与えられ、ほぼ放任状態。自然と、実力にも、仕事と向き合う姿勢にもズレが生まれていく。

ある日、ベルジョンは現地採用のアシスタントに「辞めたい」と告げられた。ベルジョン自身が採用し、手塩にかけて育てた頼れる仲間だ。「仕事は好きです。でも、仕事への姿勢があまりにも違う人と働くのは苦痛です」。ここにいても未来はないと語るアシスタントに、ベルジョンは反論できなかった。そのことが情けなかった。

PROJECT
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STORY

02

海を越えて頼った、
2人の上司。

会社に貢献してくれた現地の仲間を、実は守りきれていなかったこと。それがベルジョンにとっては一番のショックだった。せっかく入社したからには、会社を愛し、組織に貢献することにやりがいを感じてほしい。だがその前に……自分たちは、愛されるにふさわしい会社をつくっているだろうか?

その時、2人の上司の顔が浮かんだ。

1人は入社間もない頃の課長だった「岩城さん」。初めての海外出張でフィリピンに同行した時のことを、ベルジョンは鮮明に覚えている。かつて岩城さんが在籍していた現地のジョイントベンチャーに立ち寄った時、岩城さんのまわりにはたくさんのメンバーが集まってきた。相談事から成功体験の報告まで、「待っていました」と言わんばかりに話しかけるメンバーを見て、会社全体の空気を形づくる岩城さんの影響力に感銘を受けた。もう1人は、当時、メキシコに駐在中だった「伊藤さん」。ちょうどアムステルダムと同規模の現地法人にいる。そこもいろいろと問題を抱えており、伊藤さんは立て直しに奮闘中だ。

ベルジョンは2人に連絡を取った。現地社員のモチベーションを維持する方法。信頼関係の構築における「会話」の重要性。その国における給与水準の見極め方と、それに基づく上席の説得方法。きめ細かくアドバイスを受けるうちに、ベルジョンはバラバラの事業部に横串を通す管理部門の必要性を強く感じた。その役目を誰かがやるべきだとしたら、自分しかいない。

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STORY

03

知識とコミュニケーションを
深める。

ナショナルスタッフを除けば、アムステルダムでのベルジョンは若手といってもいい存在だった。管理役になれば、他部門にいる目上の社員に物申す立場になる。そのことにためらいもあった。だが、組織がこのまま崩れていくのを黙って見ている方がもっと辛い。

ベルジョンがまず始めたのは、自分自身の知識を高めることだった。オランダにおける労務、会計、税務、法務……。資料をかき集め、セミナーがあれば足しげく通った。現地の法や慣習にかなう、「そこで働くことが誇りに思える会社」をいつか実現するために。蓄えた知見は、目上の人をロジカルに説得する上でも役に立った。

一方で、各部門の部門長と密なコミュニケーションを図った。改善とそれに伴うコストの必要性を説き、しっかり納得してもらった上で、各部門内で管理面における注意事項を周知徹底してもらうためだ。また、外部の専門家との交流も増やした。それぞれのサービス内容や料金設定などを精査し、会社の規模や必要な改善事項と照らし合わせた上で、最適な会計士や税理士、弁護士を新たに任命していった。

こうした業務をこなしながら、営業としての仕事にも一切の手抜きはなかった。仕事量は急増。目が回るほど忙しい。けれどその辛さを、組織が変わっていく嬉しさが上回っていた。

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04

「阪和愛」を力に変えて。

やがてベルジョンは、現地法人のディレクターに就任。鉄鋼部門と管理部門の責任者を兼ね、名実ともに組織を引っ張っていくポジションとなった。

営業一本だった頃は、「利益を生み出すこと」が一番の目標だった。それが「円滑な組織をつくること」との両輪になった。時には食い違うこともある2つの目標が共存する感覚。難しい。けれど、面白い。

仕事のモチベーションはさまざまだが、突き詰めれば、若い頃の自分を厳しく、熱く指導してくれた先輩や上司への恩返しの気持ちから生まれる「愛社精神」だとベルジョンは考える。そんな「阪和愛」がアムステルダムにも根付いていくかどうか。変化の瀬戸際にある会社を見つめ続けたいと思う。そして、快く自分を海外へ送り出してくれた先輩や上司が、誇らしく思ってくれるような成果へとたどりつきたいと思う。ベルジョンは今、外部会計監査の窓口を勤めるという新たな仕事を背負っている。次々に役目を増やしながらも、決して力をゆるめないベルジョンこそ、もっとも深い「阪和愛」の持ち主なのかもしれない。

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