Projectプロジェクト座談会
市場の先駆者となった新エネルギー事業。
その挑戦と成長の軌跡を追う

未知の市場に挑み、数々の困難を乗り越えながら業界をリードする立場を確固たるものにしたエネルギー第三部 新エネルギー課。その成長の歩みと、次世代エネルギー分野で描くビジョンについて、事業発足時から組織を率いてきた部長の田邉さんを中心に、メンバーたちのリアルな声を聞きました。
Member
【左】
田邉 桂祐TANABE Keisuke
2004年入社、エネルギー第三部長。燃料課で石油を中心とした仕入れ・販売を担当し、2014年からは新エネルギー室の立ち上げメンバーとしてバイオマス燃料のビジネスを開始。バイオマス業界における阪和興業のリーディングカンパニーとしてのポジションを築いた立役者。
【中】
阿部 泰成ABE Yasunari
2016年の入社後、バイオマス燃料の仕入れ・販売を担当。2020年から3年間タイへ駐在し、コロナ禍の制限された状況下、東南アジア域内における新エネルギー市場の開拓に尽力した。帰国後は従来の業務に加え、新たなエネルギー源のシェア拡大を目指して奮闘中。
【右】
吉田 日菜子YOSHIDA Hinako
2020年に入社。阿部と同様にバイオマス燃料の仕入れ・販売を担当するかたわら、セミナーやシンポジウムでの登壇や、自身で身につけた知識と経験を活かしたサステナビリティの認証取得支援コンサルティングなど、精力的に活躍の場を広げている。
今は年間250万トンの新エネルギー事業も、
最初はたったの3万トンだった
- 田邉今日は就職活動中の学生さんたちに向けて、エネルギー第三部 新エネルギー課のこれまでとこれからを伝えるということで、2人にも集まってもらいました。
- 吉田なんで新エネルギー課が選ばれたんですか?
- 田邉鉄のイメージが強い阪和の中で、新エネルギー課は順調に業績を伸ばし、今や欠かせない事業軸の一つになったからかな。しかも阪和って実は、バイオマス業界全体から見てもリーディングカンパニーと言える存在で、その成り立ちや将来像をこの場で語ることで、学生の皆さんたちに阪和やバイオマス燃料ビジネスの面白さを分かってもらえたらなーって。
- 吉田なるほど~。そもそも新エネ課って、最初はどんな形で発足したんですか?
- 田邉きっかけは、電力などのエネルギー源として使われる燃料が大きな転換期を迎えたことだったな。2004年頃から石油価格が急騰し始めて、石油からガスや電気に切り替えようっていう流れが出てきた。そんな中で僕たちはこのままだったら仕事がなくなるという危機感から新エネの調査を始めて、特にバイオマス燃料には早くから注目してたんだよね。そんな中、2011年の東日本大震災をきっかけに、国の政策で再生可能エネルギーの利用が促進されて、ある会社から「輸入のバイオマス燃料を使う」から数量を集めてくれと相談を受けたことが始まりだった。ただ当時は未知の燃料で、日本にもほとんど輸入されていないし、お客様もどうやって使えばいいのか分からないし、現地も国内もどちらの流通網も全くできてなかった。暗闇の中を突き進んでいくような感じだったなー。
- 阿部バイオマス燃料とは、植物などの自然資源から作られる再生可能なエネルギー源のことで、我々のメイン商材ですね。僕が取り扱っているのはPKS(Palm Kernel Shell)という商材で、バーム油という植物油を製造するときに、ヤシの実から油を搾り取る工程のあとに残るヤシ殻のこと。東南アジアでしか生産されていないので、基本的には海外企業を相手に仕入れを行い、日本の発電所などに販売しています。
- 吉田私も同様です。ほかにも、木くずなどから作るウッドペレットという木質燃料の仕入れ・販売や、鉄鋼会社や船舶会社向けにグリーン燃料を提供するなどもしていますね。

- 田邉今でこそ新エネは阪和の柱の一つとして年間250万トンもの取扱重量があるけど、最初はたった3万トンの、ホントに小さな商売だったんだよ。
新エネルギー室として、
ビジネスの基盤を整備するフェーズへ
- 田邉初めてバイオマス発電に取り組んだお客様が軌道に乗って、僕らも発電所に出資するなど積極的に事業拡大に乗り出した。多くのお客様がバイオマス発電所を新設したいと私たちに相談に来てくださった。一気に何十万、何百万トンの需要が生まれることになった。そこで東南アジア各国の仕入れ先開拓やナショナルスタッフの採用などを進めて、商売の基盤を整備した。この市場ポテンシャルを会社も理解・評価して、「新エネルギー室」という新エネに特化した部署ができた。それから2年後の2016年に、阿部くんが入社したよね。
- 阿部はい。配属発表のとき、「新エネルギー室」って僕も同期もみんな知らなくて。どんな部署なんだと思ってました。初めて田邉さんに会ったときも「うわ、怖っ…」って感じでしたし(笑)。
- 田邉え!? なんで?
- 阿部ヒゲ生やしてるから……。ほら、ウチってヒゲの人は少ないじゃないですか。だからビックリして。実際は怖くはなかったですけど。

- 田邉ええやん、ヒゲぐらい(笑)。ところで阿部くんは何で阪和を選んだの??
- 阿部学生時代にアメリカへの留学経験があったので、海外とつながりのある仕事を探していました。中でも商社は、カッコイイ+給料高い+海外出張があるというイメージが自分の希望とピッタリで。結局、阪和を含めて3社しか受けてないんです。ダメだったら知り合いのツテで、ハワイの鉄板焼き屋で働くつもりでした(笑)。
- 吉田配属後はどんな仕事をしたんですか?
- 阿部配属されて1週間後にインドネシアに行って。こんなすぐに一人で海外出張に行けるんだって驚きました。担当業務は国内の発電所に向けたバイオマス燃料の販売や海外からの仕入れで、初めて契約を取れたときのことは忘れられません。僕らの契約は制度上、20年間の長期的なお付き合いになります。そんな大きな契約を1年目で結ぶことができたのは本当に嬉しくて。契約書を自分で作っているときに、こみ上げてくるものがありましたね。目まぐるしい日々だったけど、伸びしろしかない商材だし、お客様と一緒にマーケットをつくっていくワクワク感のほうが強くて、プレッシャーはあまりなかったですね。事業も順調に成長して、2018年にはついに「新エネルギー課」にランクアップしましたよ。
- 田邉正直、僕は課になって当たり前だと思ってたけどな。でも思い通りにはいかないこともたくさんあって、ずっと悔しかった。「お前ら、いつになったら稼げんねん」って言われたり、予算が少ないし時間がもったいないから出張の飛行機も一番安い深夜便を探したり……。課になったときもメンバーはまだ3人だけで、隣の課の忘年会に混ぜてもらったこともあったよな(笑)。今思えば、あの悔しさが僕の原動力だった。「5年以内に部署化して阪和の中心事業にする」という目標を持ってたけど、やり遂げられた達成感は大きかったし、「どうだ!」っていう気持ちがめちゃくちゃあったね。
業界をリードする立場で、
国内産業のサステナブル化を推進
- 田邉そして、吉田さんが入社したのは2020年か。
- 吉田はい。私も阿部さんと同じで留学していたので、海外と関係のある仕事ができることと、積極的に動ける会社、という2つを軸に就職活動していました。阪和は人の雰囲気が良くて、入社を決めました。
- 田邉ちょうどその頃、政府から「2年後、サステナビリティの認証に合格したヤシ殻以外は発電事業に使えないルールにします」っていうお達しが出たんだよね。この認証というのは、現地の人が適正な働き方をしているか、温室効果ガスの低減効果があるかなど、さまざまな基準を満たしていることを証明するもの。新エネ分野で先行していた僕たちが政府と協力して、海外の認証団体と交渉しながら日本での認証システムを構築・普及させるっていう取り組みをしている真っ最中に、吉田さんが入ってきた。
- 吉田私が一番記憶に残っているのは、入社2ヶ月目でそのサステナビリティの認証取得に関するウェビナー(Webセミナー)に登壇したことです。発電所関係の100社に向けて自分がプレゼンをすることになり……普通はこういうのって役職者が立つことが多いじゃないですか。「いきなり新人がこんな大仕事を!?」って感じでした(笑)
- 田邉最初にプレゼン資料を作って役員の前で発表した時、日本語がめちゃくちゃだったよね(笑)。
- 吉田いやいや! そんな、めちゃくちゃってほどじゃないですよ(笑)。確かに、役員の方から「大丈夫?」って心配はされましたけど……。私、小学生の頃に親の仕事で海外にいたり、留学したりもして海外生活が長くて、友達や家族との会話も英語が多かったんですよね。でもまあ、今は日本語も慣れました!(笑)
- 阿部うん。そこから一気に巻き返して、3ヶ月後にはバシッと一人前のプレゼンができるようになってたもんね。笑
- 吉田その出来事をきっかけに、サステナビリティに関する知見を身につけて、認証取得のコンサルティングを引き受けるようになりました。お客様には認証取得のノウハウはないし、認証を付与するのは海外の団体なので言語の壁もある。そこには大きなニーズがあるはずだと睨み、申請から取得までのアドバイスやサポートを行っています。

さらなる市場を求めて。
エネルギー第三部として、次のステージを目指す
- 吉田田邉さんのこれまでの商社人生で、思い出に残ってる出来事ってどんなことですか?
- 田邉そうだなあ……最近だと2022年に社員が一人、辞めたときかな。海外で紛争が勃発して、これは市場が混乱するぞと身構えた日の朝に、退職の意向を伝えられて、一緒にずっとやってきたメンバーだった彼が抜けるので、本気で「これ、終わったかも」って思ったなあ。
- 阿部田邉さんって普段めちゃくちゃ元気なのに、あのときだけは、7年の付き合いで初めて見るぐらい落ち込んでましたもんね(笑)。
- 田邉そりゃ、これを回せなくなったら何百億円っていう大損害になるからね。一人じゃどうしようもないからさ、みんなを呼び集めて、意識を変えてピンチを一緒に乗り越えてくれって話を真剣に伝えた記憶があるなー。
- 吉田はい、覚えてます。それで一致団結して困難を乗り越えられたから、メンバーたちの結束が固まって。ちょうどそのタイミングで組織が「エネルギー第三部」に昇格して、より充実した体制が整ったんですよね。
- 田邉うん、ただこれからが本番だよね。アジア圏におけるバイオマス業界では、僕たちがトップにいる。例えばバイオマス関連の大きなカンファレンスが開催されるときも、トピックやスピーカーのコーディネートまで、僕たちが結構リードできるやん。単に売上だけじゃなくて、業界全体への影響力を持つことができたのは、大きなやりがいだった。このポジションを活かして、さらに成長していき世界一を目指すのがミッションだね。
- 阿部僕はバイオマス燃料に次ぐ新たなエネルギー源として、液体燃料の分野を新規開拓しています。廃食油などを回収し、自動車や飛行機の燃料として再利用するというものです。将来的にバイオマス燃料よりも大きな市場規模になるのは間違いないと見ており、阪和にとって次の新エネ事業の柱に育てることが目標です。
- 吉田私が注力しているのは、新エネのさらなる供給拡大と環境負荷の低減を目指すグリーンカーボンチームでの取り組み。このチームには私たちのほか、鉄鋼系など複数の部署や海外からもメンバーが集まっていて、部署の壁を飛び越えてそれぞれの強みや販路を活かし、新エネの普及を進めています。これも田邉さんが立ち上げたプロジェクトですね。

- 田邉僕、仕掛けを作るのが好きなんだよね。こういう仕掛けを作ったら、みんなが良くなるなって考えるのが。グリーンカーボンチームも、ハコだけを作ればいいわけじゃない。チームが有機的に動くにはどんな仕掛けが必要かを常に考え、試している。僕が作った仕掛けにみんなが引っかかって、うまく動いてくれたら嬉しいね(笑)。
- 吉田グリーンカーボンチームでは鉄鋼をはじめ、さまざまな業界の人とも交流ができて、とても刺激的です。田邉さんの思惑通りに成長できるよう、自分からもどんどん働きかけていきたいです。
- 阿部やれることはいくらでもありますよね。半世紀に一度あるかないかのエネルギー業界の大転換期、自分がその最前線に立っている。それを20代、30代から経験できるのは本当にラッキーだと思います。
- 田邉うん、今のこの業界は面白いよね。それは自信を持って言える。「阪和興業の中の◯◯さん」ではなく、新エネルギーのエキスパートとして自分の名前を看板にして、世界で戦っていけるような人材をどんどん輩出したい。それも業界ダントツトップになるために重要なことですね。
