Special Feature特別編集
偉い人も、昔は若手だった。

今では阪和興業の経営を担う役員たちにも、当然ながら若手だった時代がある。
取締役専務執行役員の篠山さんと若手社員2人が同じ卓で食とお酒を交えながら、篠山さんの過去を振り返る中で、阪和と自身のこれからに思いを巡らせます。
Member
【左】
小林 悠紀KOBAYASHI Yuki
IT化が進む中、人の力でゼロからイチを生み出す商社のビジネスに興味を持ち、2016年度に入社。鋼板建材部に配属されて出会った篠山専務の人柄に打たれ、阪和興業で働くことへの情熱に火が付いた。現在は鉄鋼製品の輸出入のほか、後輩育成などにも携わっている。
【中】
篠山 陽一SASAYAMA Yoichi
1984年度入社、取締役専務執行役員。入社から30年間を鋼板建材(こうはんけんざい)部で過ごし、数々の新規開拓で阪和の成長の原動力に。2014年にタイ、翌年にはインドネシアに駐在し海外展開を拡大。2017年の帰国後、名古屋での勤務を経て2020年からは再び東京へと戻り、鋼板建材部をはじめとする複数部門を管掌。
【右】
赤羽 咲紀AKAHANE Saki
2022年度入社、薄板(うすいた)部所属。「人」で勝負できること、海外との接点があることの2軸で就活。入社後は、自動車やOA機器のメーカーに向けた鉄製品のトレーディングを担当。女性総合職としてキャリアアップを目指し、現在は海外への駐在を目標にしている。

- 小林じゃあ3人揃ったところで、まずは生ビールでいいですか?
- 篠山うん。2人とはしょっちゅう飲んでるからいつもと変わらないよな(笑)。
- 赤羽ですよね(笑)。専務とはこれまでもいろんな機会でご一緒していて。仕事のことも相談しやすいし、役員なのに気軽に冗談を言いながら話せるので、ありがたいです。
- 小林今日も何度か僕のデスクに来て「何時からだっけ?」って聞いてきて。「どんだけ楽しみにしてるんだ!」って思ってましたよ。専務はホントに壁がないですよね。
- 篠山俺、もうちょっと役員の威厳を出して壁を作りたいんだけどなあ(笑)。あ、ビール来たよ。乾杯しよう。
- 全員かんぱ~い!

入社以来、鋼板建材一筋。
30年目で海外の市場開拓へ
- 赤羽若手時代にはどんな仕事をしてたんですか?
- 篠山入社して30年、東京鋼板部門一筋だね。役員に就任した2014年から3年間、タイ、インドネシアで海外駐在を経験して、ASEANを中心にいくつかの国で市場開拓をしてた。
- 小林英語、喋れたんですか?
- 篠山いやそれがさ、ロクにできないの(笑)。そもそも担当はずっと国内取引だけだったし、けっこう珍しいケースだね。それでも海外行きが決まったのは、日本でのビジネスモデルをどう海外に移植していくか、っていうのが喫緊の課題としてあったからなんだよな。
- 小林なるほど。専務のように国内取引のスペシャリストが行くことで、日本のやり方を海外で再現しようっていう。
- 篠山うん。当時の海外取引って、日本メーカーの製品を仕入れて、海外にいる日系企業(現地法人)に販売する流れが多かったんだけど、仕入れ先を海外メーカーにして、海外メーカー製品を海外の日系企業及び現地ローカル企業に販売する、っていう商流を作ろうとしてたんだよ。いわゆる三国間取引ってやつだな。
- 赤羽日系企業が相手だから、日本のクオリティや商習慣で商売をしたいというニーズがあったんですね。国によって言葉や文化が違うから、すごく複雑そう…。
- 篠山まあ難しかったけど、楽しかったよ。あ、ビールお代わりお願いします。
- 小林早い!


若手2人にとっての、思い出に残る仕事
- 篠山先に聞きたいんだけど、2人にとっての思い出深い仕事って何?
- 小林コロナ禍のとき、中国に駐在していた山本さんと協力してサーマルカメラの輸入ビジネスを成功させたことですね。鋼板建材部で初めてのBtoCビジネス、しかも全く未知の商材で。大げさかもしれないけど、海外で新たなビジネスモデルを構築するという、阪和の目指す姿の一つを描くことができた。このプロジェクトをやり切れたのは、自信になりましたね。
- 赤羽私は、入社2年目の頃に仕入れ先の事業がピンチに陥ったとき。仕入れが止まると、お客様の工場が止まってしまう。そんなこと初めてだったので、異変に気づいたときは動揺して、どうしよう、どうしようって。上司や同僚に相談して過去の対処事例を聞きながら、仕入れ先の事業をつなぎ止めるために必死で走り回りました。結果的には周りの協力会社も全部巻き込んで、なんとか乗り切ることができました。

- 篠山そのとき、上司は何て言ってた?
- 赤羽不安でいっぱいになりながら報告したら「大丈夫、こういうことは起こるから。今、何をすべきか自分で考えて行動して、分からなかったら聞いて。最大限やれることをやってみよう」って言ってくれて、すごく心強かったです。私がもし上司で、同じようなことが起きたら、自分が動いて解決しようとすると思うんですよ。でも上司は、私を信頼して任せてくれてるんだって。だから不安はあっても前を向くことができました。無事に乗り越えたときには「よくやった。飲み行こうか」って。やり切って良かったって心から思えましたね。
- 篠山上司も腹くくってるから、最後は逃げずに責任を負う覚悟があるんだよな。
- 赤羽はい。これを機に、信頼関係が一番大切なんだなって思うようになりました。社内外を問わず、信頼があれば互いに意見を言いやすい。先日も、担当して3年経ったお客様から「次、この案件ちょっと一緒にやってみようか」っていうお誘いを初めて受けました。
- 篠山おお、いいじゃん。信頼されてる証だよね。2人とも、いい仕事してるなあ。はいこれ、ここのカニクリームコロッケ美味しいからさ。食べて食べて。
- 小林・赤羽ありがとうございます! いただきます!

40年の仕事人生で、忘れられないこと
- 赤羽専務の仕事エピソードも聞きたいです。それこそ失敗談とか。

- 篠山失敗はたくさんあるよ。ある鋼板製品の仕様を間違えて200トンくらいドーンと納めて「使えません」って返されたとかさ。でも失敗だけじゃなくて、心に残った仕事があるんだよ。5〜6年目の頃かな。ある大型の入札案件があって、他に競合がいるわけ。仕入先と話し合って「この金額で行こう」ってのを決めるじゃん。そしたら打ち合わせの後、仕入先メーカーの役員さんから呼ばれて、白紙の見積書を渡されて、「商談中に今の値段で厳しそうだと思ったら、その場でこの白紙の見積書に値段書いて渡して。金額はあなたに任せるから」って。これはたまらなかったね。人から信頼された、一人前として認められたっていう出来事でさ、40年の仕事人生の中でも強く心に焼き付いてるよ。
- 赤羽初めて聞きました! それで、どうなったんですか?
- 篠山俺が書いた金額で出して、その場でウチへの発注を決めてくれたよ。

- 小林僕は以前に聞いたことがあるけど、熱いエピソードですよね。今は稟議など決裁の規則があるから同じようなことはできない。そういう話を聞くと、自分も何か新しいことをやりたいって燃えてきますね。
- 篠山うん、どんどんやってみるといいよ。ほら、箸が止まってるじゃん。オムライスも美味しいよ。
- 小林・赤羽いただきます!
- 篠山30年間ずっと同じ部署だったからさ、こういうふうに自分が開拓して一緒に成長してきたお客様ってたくさんいるんだよ。その歴史こそが阪和興業のビジネスの源流だと思うんだけど、それを継承することがまだあまりできてないのは課題なんだよね。
- 赤羽なるほど。そのお客様と商売ができるようになったリアルな背景が伝わらないと、担当を引き継いだときにそのお客様とのつながりや思いが薄れてしまう?
- 篠山そういうこと。当時の阪和ってさ、個人の強さで成長できてる会社じゃん。もちろんそれは一番の阪和らしさだし、大事なことなんだよ。だけどそれとは別に、作り上げてきた財産をどう次世代に渡していくか。それを考えていくのは俺の役割だけど、2人にも俺たちの歴史をどう受け止めていくか、っていうのは考えてほしいなと思ってるよ。

NG無し! 篠山専務への質問コーナー
- 小林ではここから、専務への質問コーナーに行きましょう!
- 赤羽じゃあまずは私から。「今のうちにコレやっておいた方がいいよ」ってこと、ありますか?
- 篠山やっておいた方がいいことか……それは立場によって変わるからなあ。やりたいことがあるなら何でも全力でチャレンジする、ってことじゃないかな。例えば赤羽さんは、海外に駐在したいとか思ったりする?
- 赤羽はい、思います!!!
- 小林あ、自己アピールずるい! 僕も行きたいですよ!

- 篠山(笑)。普段はさ、海外駐在と直接関係ない仕事もいっぱいあるでしょ。でもそれも与えられた機会だからさ、一生懸命やって結果を出して、上司と信頼関係を築いてさ。そしたら上司も「海外駐在に向けて、あとはこういう経験を積ませてから送り出そう」って考えるようになるじゃん。そういうふうに取り組んでいけばいいんじゃないかな。
- 赤羽ありがとうございます。早く海外に駐在して新しいビジネスに挑戦できるように頑張ります!

- 小林じゃあ次は僕からの質問です。NG無しでお願いしますね(笑)。ぶっちゃけ、阪和の未来はどうなると思いますか? 売上3兆円を見据えて7大総合商社に迫る中、これまでのように専門商社のガリバーというポジションを保ち続けるのか、それとも総合商社を目指すのか。専務の考えを聞かせてください。
- 篠山小林くんはどう思う?
- 小林僕は総合商社を目指してほしいです。例えば子どもがテレビのCMで見て阪和のことを知ってくれるような、もっと家族に自慢したくなる会社になってほしい。
- 篠山ちょうど今日、他の部長たちともそういう話をしたよ。結論から言うと、総合商社を目指したらダメだと思う、俺はね。同じことやっちゃダメだよ。そもそも資本力や人材の層の厚さでは勝てないし、他社にできないことをやって伸びてきたのがウチじゃん。

- 小林でも、売上は一部の総合商社にも負けてないですよ。
- 篠山うん。売上額も大事だけど、もっと大事なのは中身。小林くんがサーマルカメラで商売を作ったみたいに果敢にチャレンジを続けていくとか、赤羽さんのように信頼関係を築いて仕事の幅を広げていくとかさ。泥臭いことの積み重ねが阪和でしょ。それで結果的に総合商社に似てくるのはいいと思うけどさ、最初からそこを目指していくのはちょっと違うと思うんだよな。
- 小林なるほど……。専務の考えが聞けてよかったです。僕、そういう未来への指針を上層部の方々にはもっと示してほしいと思ってるんですよ。
- 篠山それはあるよな。これまで曖昧にしてきちゃったなって反省はある。

- 赤羽会社の方向性は、社員個人のキャリアプランにも関わりますよね。特に女性は出産などのライフイベントがある中で、自分のやりたいことをどう実現させていくか。以前、専務が女性の役員や管理職の方を集めた場に私を呼んでくれたことがあって。キャリアや人生を考える上でのロールモデルとしてすごく参考になりました。
- 篠山女性総合職も増えてるもんな。一般職を含めると新入社員の半数以上が女性だし、管理職や海外駐在員も今後はもっと増えていくだろうし。
- 赤羽会社は人生の大部分を過ごす場所だから、その方向性にはみんな関心があると思います。
- 篠山そうだよな。ウチの強さってさ、赤羽さんの言った信頼関係の強さだと思うんだよ。それも表面的な話じゃなくて、時にはお客様や仕入れ先にとって耳が痛くなるような厳しいことだって言える関係。それを軸に、新時代の専門商社として独自の姿を描きながら進んでいくのが阪和らしい未来像だと思ってるよ。

仕事のやりがいと、大切にしていること
- 篠山じゃあ逆に俺からも聞きたいんだけどさ。2人は仕事、楽しい?
- 赤羽楽しいです! 自分で物事を考えて決めて行動できるし、それを上司たちも受け止めてくれるから。やっぱりそれも、さっき話したピンチを乗り越えたことで気づいた楽しさですね。
- 小林ずっと、めっちゃ楽しいです。ただ毎年、楽しさのベクトルが変わる。単純に自分の成績が良くて楽しいってときもあれば、つらい時期こそ楽しいと思える局面もあったし。でもずっと、前向きに楽しめてて、どんな状況でも一定以上は楽しいって感じるんですよね。
- 赤羽専務は楽しんでますか?
- 篠山俺が一番楽しかったのは課長時代だったな。中間管理職だからしんどいイメージあるかもしれないけどさ、自分で描いた絵を実現しようと思ったときに、自分でも動けるしチームでも動けるでしょ。当時からやりたいことをやらせてもらえて、やりがいがあったよなあ。
- 小林今は楽しくないんですか?
- 篠山いや、楽しいよ。でも今は立場が変わって、お客様に会いに行く機会がないんだよ。それがホントに残念で。たまに会いに行って仕事のことをガチで話すとさ、こんな楽しいことないよなあって実感するんだよ。
- 小林経営層の方々も、皆さんそういう気質ですよね。やっぱり、みんな根っからの商社パーソンなんだよな。
- 赤羽篠山さんが仕事をする上で大切にしていることって何ですか?
- 篠山う~ん。お客様でも同僚でも、相手の立場に立ってものを考える、ってことかな。商社ってさ、自分の会社を中心にモノを考えたら絶対に成り立たない。まず相手が何を考えて、どんな思いを持って自分と接してるかってことをちゃんと理解しないと。でもそれって仕事というよりも、人対人、人間関係の基本みたいな話だよな。

- 小林基本だけど大事なことです。僕らも後輩世代にそれを伝えていかないとですね。
- 篠山そうだね、背中を見せてやってほしい。でもね、今日は2人の話を聞いて安心したよ。大変なこともあるけど、2人とも仕事を楽しんでくれていて。俺たち一人ひとりがさ、ここで働き続けたいって言ってもらえる会社にしていかないとね。
- 赤羽そうですね! 今日はこれまでに聞けなかったような話も聞けて、すごく楽しかったです。またぜひご一緒させてください。
- 小林このあとカラオケ行きますか!
- 篠山いやいや(笑)。ワインも空いたし、今日はこれでお開きにしよう。
- 小林・赤羽(笑)。ごちそうさまです! ありがとうございました。
